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業務改善・情報設計

営業資料を改善して成約率1.4倍:改善事例付き

田中 誠(情報設計コンサルタント)
営業資料を改善して成約率1.4倍:改善事例付き

はじめに

「営業資料を作ったけど、なかなか成果に結びつかない…」「どうすれば相手に伝わる資料になるのか」そんな悩みを抱える企業は少なくありません。実は、営業資料の構成や情報の見せ方を工夫するだけで、成約率が大きく向上することがあります。

この記事では、情報設計の視点から営業資料を改善し、成約率を1.4倍に向上させた実例を紹介します。具体的な改善ポイントと、すぐに実践できるテクニックをお伝えしますので、自社の営業資料改善にぜひお役立てください。

1. 営業資料の問題点:なぜ伝わらないのか

まずは、多くの営業資料に共通する問題点を整理しましょう。

よくある営業資料の問題点

  • 情報過多:伝えたいことが多すぎて、重要なメッセージが埋もれている
  • 自社視点:顧客の課題やニーズではなく、自社の製品・サービスの説明に終始している
  • 論理的整合性の欠如:情報の順序や構成に一貫性がなく、理解しづらい
  • 視覚的な分かりにくさ:文字ばかりで、視覚的な整理ができていない
  • 具体性の不足:抽象的な表現が多く、実際のイメージが湧きにくい

これらの問題は、「伝えたい」という思いが強すぎるあまり、「相手に伝わる」という視点が欠けていることから生じます。効果的な営業資料は、自社の伝えたいことと、顧客が知りたいことのバランスが取れている必要があります。

2. 事例紹介:IT企業A社の営業資料改善

ここでは、実際にIT企業A社の営業資料を改善し、成約率を1.4倍に向上させた事例を紹介します。

A社の課題

A社は中小企業向けのクラウドシステムを提供するIT企業です。技術力には自信があり、製品の機能も充実していましたが、営業資料が「伝わらない」という課題を抱えていました。

改善前の状況:

  • 営業資料は全20ページと情報量が多い
  • 機能や仕様の説明が中心で、顧客メリットの説明が少ない
  • 専門用語が多く、IT知識のない経営者には理解しづらい
  • 成約率は商談数の約15%にとどまっていた

改善のアプローチ

A社の営業資料を情報設計の視点から分析し、以下のアプローチで改善を行いました。

  1. ターゲットの明確化:意思決定者(経営者)と利用者(現場担当者)それぞれに向けた資料の分離
  2. 情報の優先順位付け:顧客にとって重要な情報を前半に配置
  3. ストーリー構成の見直し:顧客の課題から解決策、導入効果までの流れを整理
  4. 視覚化の強化:文字情報を図解やイラストに置き換え
  5. 具体的な事例の追加:抽象的な説明を具体的な導入事例に置き換え

3. 具体的な改善ポイント

A社の営業資料改善において、特に効果が高かった5つのポイントを詳しく解説します。

ポイント1:最初の3ページで興味を引く

営業資料の最初の3ページは、顧客の興味を引くかどうかの分かれ目です。A社の資料では、以下の改善を行いました。

改善前:

  • 1ページ目:会社概要
  • 2ページ目:システムの概要説明
  • 3ページ目:システムの特徴

改善後:

  • 1ページ目:顧客が抱える3つの課題を視覚的に表現
  • 2ページ目:導入による3つの主要メリットを数字で表現
  • 3ページ目:導入企業の声(経営者のコメント付き)

この改善により、顧客は「自分の課題に対する解決策がある」と認識し、資料への興味が高まりました。

ポイント2:「機能」ではなく「メリット」で伝える

技術系の企業によくある問題として、機能や仕様の説明に終始してしまうことがあります。A社の資料では、すべての機能説明を「顧客メリット」に置き換えました。

改善前の例:

「クラウド型データベースを採用し、リアルタイムでのデータ同期が可能です。」

改善後の例:

「外出先からでもスマホで最新情報を確認・更新できるため、営業担当者の移動時間が月平均15時間削減されました。」

機能そのものよりも、その機能によって得られる具体的なメリットを伝えることで、顧客の理解と共感が深まりました。

ポイント3:図解とビジュアルの活用

文字情報だけでは理解しづらい内容も、適切な図解やビジュアルを用いることで、直感的に伝わるようになります。A社の資料では、以下の改善を行いました。

改善前:

  • システム構成を文章で説明
  • 導入効果を箇条書きで列挙

改善後:

  • システム構成をイラスト図で表現し、各部分の役割を視覚的に説明
  • 導入効果をビフォー・アフターの比較図で表現
  • 数値データをグラフ化し、傾向を視覚的に把握できるよう工夫

特に、「導入前と導入後の業務フロー比較図」は、顧客にとって具体的なイメージが湧きやすく、高い評価を得ました。

ポイント4:具体的な事例とストーリーの活用

抽象的な説明よりも、具体的な事例やストーリーの方が記憶に残りやすいものです。A社の資料では、以下の改善を行いました。

改善前:

  • 「多くの企業で導入されています」という抽象的な表現
  • 導入企業名のリスト

改善後:

  • 業種別の具体的な導入事例(課題→導入→効果の流れで構成)
  • 実際の画面イメージと共に、使用シーンを具体的に説明
  • 導入担当者のコメントを写真付きで掲載

特に、顧客と似た業種・規模の企業の事例は、「自社でも実現できる」というイメージを持ってもらうのに効果的でした。

ポイント5:行動を促す仕掛けの設置

営業資料の最終目的は、次のアクション(商談や問い合わせなど)につなげることです。A社の資料では、以下の改善を行いました。

改善前:

  • 最終ページに連絡先を記載

改善後:

  • 資料の要所に「詳しく知りたい方はこちら」というアクションボタンを配置
  • 無料トライアルの案内と簡単な申込み方法を明示
  • 「よくある質問」セクションを追加し、導入に対する不安を払拭
  • 最終ページに「3ステップの簡単導入プロセス」を図解で説明

これらの改善により、資料を読んだ後の行動障壁を下げ、問い合わせや商談につながりやすくなりました。

4. 改善の結果と効果

A社の営業資料改善の結果、以下のような効果が得られました。

  • 成約率の向上:15%から21%へ(約1.4倍)
  • 商談時間の短縮:平均90分から60分へ(約33%減)
  • 資料の共有率向上:顧客企業内での資料共有が増加
  • 営業担当者の自信向上:分かりやすい資料により、営業トークにも一貫性が生まれた

特筆すべきは、改善後の資料は全12ページと、改善前(20ページ)より情報量が減ったにもかかわらず、顧客の理解度と満足度は向上したことです。これは、「量」ではなく「質」と「構成」が重要であることを示しています。

5. 自社の営業資料を改善するためのステップ

A社の事例を参考に、自社の営業資料を改善するための具体的なステップを紹介します。

Step 1: 現状の営業資料を客観的に分析する

まずは、現状の営業資料を客観的に分析しましょう。

  • 社外の人(できれば顧客層に近い人)に資料を見てもらい、率直な感想をもらう
  • 営業担当者に、顧客からよく質問される点や、説明に時間がかかる箇所をヒアリング
  • 資料のページごとに「このページで伝えたいこと」を書き出し、一貫性があるか確認

Step 2: ターゲットと目的を明確にする

営業資料の対象者と目的を明確にしましょう。

  • 主なターゲット(意思決定者か、現場担当者か)を特定
  • 資料の目的(認知向上、興味喚起、比較検討、最終決定など)を明確に
  • ターゲットが知りたいことと、自社が伝えたいことのバランスを考慮

Step 3: 情報の優先順位とストーリーを設計する

情報の優先順位を決め、一貫したストーリーを構築しましょう。

  • 最初の3ページに最も重要なメッセージを配置
  • 顧客の課題→解決策→導入効果→次のステップという流れを意識
  • 各ページの冒頭に「このページで伝えたいこと」を明示

Step 4: ビジュアル化と具体化を進める

文字情報をビジュアル化し、抽象的な表現を具体化しましょう。

  • 文章での説明を図解やイラストに置き換える
  • 数値データをグラフ化する
  • 抽象的な表現を具体的な事例や数字に置き換える
  • 専門用語を平易な言葉に言い換える

Step 5: テストと改善を繰り返す

完成した資料をテストし、継続的に改善しましょう。

  • 社内の他部門の人に見てもらい、分かりにくい点をチェック
  • 可能であれば、実際の顧客に少数提示してフィードバックを得る
  • 営業担当者の使用感をヒアリングし、説明しづらい点を修正
  • 定期的に効果を測定し、継続的に改善

6. 印刷とデジタルの効果的な組み合わせ

最後に、印刷資料とデジタルツールを効果的に組み合わせる方法について触れておきましょう。

印刷資料の強み

  • 手元に残るため、後から見返すことができる
  • 会議の場で全員で同じものを見ながら議論できる
  • デジタルデバイスがない環境でも使用できる
  • 触覚的な体験により、記憶に残りやすい

デジタルツールの強み

  • 動画や音声など、多様な表現が可能
  • インタラクティブな要素で理解を促進
  • 最新情報に更新しやすい
  • 必要な情報にすぐにアクセスできる

効果的な組み合わせ方

A社では、以下のような組み合わせで効果を高めました。

  • 印刷資料にQRコードを配置し、詳細情報や動画へ誘導
  • 基本的な説明は印刷資料で行い、詳細な仕様や事例はデジタルで提供
  • 印刷資料で興味を喚起し、デジタルツール(デモサイトなど)で体験を提供
  • 印刷資料は「変わらない価値」を伝え、デジタルは「最新情報」を提供

まとめ:効果的な営業資料は「伝わる」ことを最優先に

営業資料の改善において最も重要なのは、「伝えたいこと」ではなく「伝わること」を優先する視点です。情報の取捨選択、優先順位付け、視覚化、具体化などの工夫により、顧客にとって分かりやすく、記憶に残る資料を作ることができます。

A社の事例のように、営業資料の改善は成約率の向上という具体的な成果につながります。ぜひ、この記事で紹介したポイントを参考に、自社の営業資料を見直してみてください。

当社では、情報設計の視点からの営業資料改善コンサルティングも行っております。「もっと効果的な営業資料にしたい」「専門的なアドバイスが欲しい」という方は、お気軽にご相談ください。

この記事を書いた人
田中 誠

田中 誠

情報設計コンサルタント

大手広告代理店でのコピーライター経験を経て、現在は印刷会社の情報設計コンサルタントとして活動。年間100社以上の営業資料改善を支援している。

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